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 ▼久米島紬の作業工程

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 生糸 〜引き糸(繰糸)による糸づくり

<煮繭(しゃけん)>

  自家用の生糸は、繭を鍋で煮て直接煮て絹糸を繰り出して作りました。はじめに原料となる繭をお湯で煮て、繭のセリシンを適当に柔らかく溶かし、解じょを助けます。これを煮繭といいます。

 煮繭が足りないと、繭から糸口が出にくく、繰糸中に糸が切れたり小節が出来たりして品質と生産の効率が下がります。逆に煮繭が過ぎると繭層の外側が煮くずれて屑糸が多くなるだけでなく、繰糸中に繭糸がもつれた状態でほぐれて出てしまい糸節が出来てしまったりします。

 このように煮繭の工程は生糸の質に大きく影響するので生糸を作る上でもっとも重要な工程と言えます。

 煮繭は精錬ではないので薬品は使いません。また、硬水はセリシンの軟和を妨げる働きがあるため、煮繭に使用する水は軟水が望ましいです。

 はじめに温湯(50〜60℃)に浸して繭層に水分を含ませます。元々は繭層は水に濡れにくい性質があり、いきなり熱湯に入れても煮えムラができやすいので煮繭を始める前に温湯にゆっくり浸して水分を浸透させます。乾燥繭で20分、生繭で10〜15分くらいを目安にします。
 繭は水の中では浮いてしまうので、繭の上から平たい金網を落としぶたのように被わせて押さえ、繭全体が水に浸るようにします。次に熱湯(90℃)に繭を入れて、沸騰しないように火加減を十分調節し、7分間煮繭します。底の平らな物で繭を軽くトントンと叩いて衝撃を与えると煮繭がむらなく早く進みます。水分が浸み込むと繭は白色から徐々に半透明がかった銀白色になってきます。これがすっかり銀色になってしまったら煮繭が過ぎてしまっています。良い具合に煮繭した繭は、少しくすんだ銀白色で触ると表面がなめらかで押したときに弾力があります。

 時々ほぐれ出て来た糸口を持ち上げてみて、煮繭の具合を見ます。繭が繭糸に吊られて持ち上がらずスルスルと抵抗無くほぐれてくる(解じょする)ようであれば十分です。1個の繭を持ち上げた時、たくさんの繭が一緒に上がってきてしまうのは煮繭が過ぎているという事で、ある程度糸口は出ていても一つ一つの繭はバラバラなのが丁度良い煮繭の状態です。
 ぬるぬるして来たら、火を止めて3分間放冷します。
 湯から出すと乾いてしまうので、糸取りするまではぬるま湯に漬けておきます。

<繰糸
 糸を繰る時、上繭や玉糸の場合は座繰り操糸の方が効率よく、質の良い糸が出来ます。また琉球多蚕絹など解除の悪い繭の場合には、糸の様子をみながら繰ることが出来る手引き操糸が向いています。
 煮繭したばかりの繭からは、外層がほぐれてたくさんの繭糸が互いに絡み合ってしまっています。絡み合った繭糸の束をしばらく手でたぐっていくと、余分な糸が巻き取られ、一つの繭からほぐれて何カ所も出ていた繭糸がそのうち一本だけになります。

 糸口の出ていない繭は湯の中に入れ、緒立箒(脱穀後の稲穂を束ねたもの)をつくり繭の表面を穂先で転がすようにしてそっと撫でて糸口を捜します。稲穂が手に入らない場合は、食器用スポンジなど、柔らかくて糸がひっかかるようなざらざらした面をもつ物で代用できます。沖縄では伝統的にユウナの葉の裏を利用しました。
 着尺経糸用生糸を作る場合、210デニールの糸を使うので3本合糸では27粒(1本70デニール)、2本合糸では40粒(1本100デニール)、1本引きでは80粒程度(1本210デニール)を目安に常に同じ数の繭から糸が繰り出せるようにします。太い生糸をいっぺんに繰ると太さのムラや節が出やすいので、合糸する方が美しい絹糸に仕上がります。

煮繭が完了したらぬるま湯に移す 糸口を出す 緒立箸で糸口を捜す

a.座繰り繰糸
 煮繭した繭からつづみ車と座繰り器を使って糸をひきます。
 ケンネル撚をかけることによって、繭糸がよじれ合い、抱合するので、断面が丸く、上質な糸ができます。久米島へは昭和6年に導入されました。
 糸口を出しておいた繭を鍋に入れて目標の太さになるように必要な数の繭から糸を繰ります。湯の温度は40〜60℃位で、抵抗なく繭糸が出てくるように調節します。

  追加用の糸口を出した繭の糸口をまとめ、鍋の端に準備しておきます。繰糸している繭が薄くなったり繭糸が切れたりしたらすぐに新しい繭を追加し、また繭の外層・内層によって糸の太さが異なるので各層の糸が入り交じるように調節し常に同じ太さになるようにするのが大切です。
 解じょがうまくいかない時は煮繭が足りない場合もあるので再び熱湯に戻して具合を見ながらもう少し煮ます。
 繭糸が切れたり薄くなって繭糸がもう出てこなくなったりした繭はこまめに取り除いて常に糸寄せの下に操糸されている繭だけのかたまりがあるようにすれば糸ムラや傷のない美しい生糸がとれます。 

 繭糸を追加する時は、繭糸を人差し指に掛けて手のひらに新しい繭を持ち、繭を糸の巻き取られている繭のかたまりの中に落としてから繭糸を操糸している糸の近くに持ってゆき、そこに沿わせるようにすると自然にくっついて巻き取られていきます。繰糸を止めるとセリシンがくっついてしまうので糸を追加するときも座繰りは常に回転させたままでいるようにします。

b.手引き繰糸
 座繰り繰糸と同様に、糸口を出しておいた繭を鍋に入れます。目的の太さになるように繭をまとめ、引き出した糸を紙を敷いた広い籠の上に置きます。
 右手、左手を交互に前後させて繭から糸を引きだしていきます。1個の繭から繭糸が出尽くしたときには新たに繭を補充して、いつでも同じ太さに保ちます。湿っているうちは糸のセリシン同士がくっつきやすいので、前後・左右に糸を置いてなるべく糸同士が密着しないようにします。
 解じょがうまくいかない時は煮繭が足りない場合があるので、再びお湯に戻して具合を見ながらもう少し煮ます。

 このような方法を久米島では「ヒッチンヂャーサー」あるいは「ずりだし」と言い、昭和の始めまで使われていました。  

座繰り繰糸 繭糸を追加する 手引き繰糸

<撚糸>

 生糸がバラバラにならぬように束ねて繊維を適当な太さにするために、糸に撚をかけます。
 手織り用の絹糸の場合、100回/m程度の撚りで十分です。200回/m以上になると仕上がりに影響が出て、せっかくの絹の風合いが失われます。

a.糸車による撚糸法(チムズン)
 繰糸した生糸を小管に巻きつけます。それを糸車にセットし、糸車を3回程回転させたら小管に巻き取る方法で、撚りをかけていく方法です。特別な道具を使わない最も基本的な方法です。 

b.糸車と座繰りによる撚糸法
 撚糸を始める前にまず生糸を木枠から小管に巻き変えます。
 座繰りで糸枠に巻き取られた生糸を、糸枠ごとぬるま湯に漬け、セリシンを柔らかくします。次に、撚糸機にかけるため、合糸する場合は2〜3本の糸をまとめながら長めの管にたて巻きに巻き変えます。小管を回転させながら、縦方向にほどいて撚りをかけていくため、絹糸が出やすいようにたて巻きに巻く必要があります。

 管に巻き取ったら糸が乾燥しないように水に漬けておきます。乾いてしまうと、糸に残っているセリシン同士がくっついてしまいます。
 緯糸を巻くための糸車と座繰りを使って一本の糸に撚をかけることができます。
 糸車に生糸をたて巻きに巻いて水に漬けておいた管をセットし、右手で糸車を回して糸に撚をかけながら左手で座繰り機を回して機枠に巻き取ってゆきます。糸車を回す速度と巻き取り速度で撚り加減を調節します。撚をかけ終わったら綛上げし乾燥させます。特別な道具を使わないで、能率的に撚りかけができる方法です。

c.簡易撚糸法(かんいねんしょうほう)
 明治の初期に行われていた方法で、糸車を改造し、紬錘を3〜5個に増やし、綛上げ機と併用して糸の撚かけを行います。
 右手で糸車を回して撚をかけ、左手で綛上げ機を回して撚のかかった糸を巻き取ります。撚り数は糸車と綛上げ機の回転数の比によって決まります。

d.八丁撚糸機法
 同じ原理で、紡錘(ほうすい)を増やし、糸車と綛上げ機を連動させて一定の撚加減の糸が作れるよう改良した撚糸機です。
 沖縄には昭和5〜6年頃熊本地方から導入され広く使用されました。右手で糸車を回すだけで撚かけと綛上げが出来ます。
 ここに描かれているのは10錘型で、一度に10綛の綛糸が出来ます。歯車の比によっては撚糸数を加減することができます。

糸車による撚糸法 簡易撚糸法 八丁撚糸による撚糸法

<精練>

 繭糸から製糸された生糸には、20〜30%のにわか状の蛋白質であるセリシンや、他の二次的な付着物を含んでいるために、手触りは堅くて光沢にも欠けています。これらを除去し、絹繊維の特性である柔らかくて光沢のある風合いを出すため、強アルカリ液で精練を行います。
 精練によってセリシンや不純物の大部分を取り除くことを「本練り」と言い、精練の程度によって「三分練り」「五分練り(半練り)」「七分練り」などと言います。本練りをすると約3割近く重量が減ります。これを練り減りと言います。

 

●アルカリ精練 

a.ソーダ精練
 ソーダ精練は少し硬い風合いに仕上がります。使用する水の硬度による影響が少なく、短時間に、安価で精練できるメリットがあります。マルセル石鹸と比べておよそ2倍の強い溶解力であるので、洗練のしすぎ(過精練)や練りむらが出来やすいので注意が必要です。
@前処理
 ぬるま湯に浸す。 または炭酸水素ナトリウム1〜2%液(40℃)に10〜15分漬ける。

A精練
 無水炭酸ナトリウム 3〜5% 
 無水炭酸水素ナトリウム 3〜6%
 中性洗剤 3%
 浴比    30〜50倍
 温度    95〜99℃
 時間    20〜50分
 ph10.6〜10.8
 手で糸をつまんでみて、ぬるぬるしなくなったら完了。

B水洗い
 精練の終わった糸を脱水し、冷ましてから40〜50℃の温湯で、数回繰り返して洗い、さらに十分水洗いする。
 最後に0.1cc/l酢酸溶液に5分ほど浸漬して仕上げる。アルカリの中和と風合いの改良になる。

b.灰汁精練
 灰汁に含まれるアルカリ分によって精練する方法です。灰はわら灰が最も良いと言われています。糸質を損なわず、美しい艶のある柔らかな光沢に仕上がります。また、植物染料の染色での発色は最良で、従来はこの方法でした。
@灰汁の作り方
 糸量の2〜3倍の新しいわらを短時間で焼き、黒い灰の状態でまた赤く焼けている間に、糸量の20倍程度の湯をかけて灰汁を作ります。しばらく静置して沈殿させ、上澄み液を漉し分けて精練用の灰汁とします。ph10.4になっていれば精練できます。

A前処理
 ぬるま湯に浸す。
B精練
 灰汁 (ph10.4)
 浴比    30倍
 温度    95〜99℃
 時間    1時間半〜2時間
 手で糸をつまんでみて、ぬるぬるしなくなったら完了。

C水洗い

 精錬の終わった糸を脱水しさましてからぬるま湯で数回繰り返して洗い、さらに十分水洗いする。

 最後に0.1t/l 酢酸溶液に5分ほど浸漬して仕上げる。

 経糸

●経糸用の絹糸

 経糸には、生糸と玉糸が向いています。100回/m前後の撚りをかける必要があります。紬糸は経糸にして機にかけると開口の度に毛羽立ってくるので、撚りをかけるか、強い糊をつける必要があります。

 緯糸

●緯糸用の絹糸

 緯糸には生糸、玉糸、紬糸のどれもが使えます。それぞれ質感が違うので目的の風合いによって使い分けます。

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