染色の際一旦落とした糊を製織にいたるまでの作業がスムーズにいくように再度糊付けをします。染色時におきた糸の小さな毛羽をおさえる効果があると同時に糊付けをして引き伸ばすことにより、絣のくるいを無くし、模様を図案通りに揃えて固定することができます。一般に糊の濃度は、天候にも左右されるので経験を生かした判断が必要と思われます。
染色後絣糸は、括られた部分の綿糸を解きます。
次に染料が滲まない為に巻いたビニールを外しすべての括りを解いたら、図案に合わせ、種類の違うそれぞれの絣が適正な位置にくるかどうかを確認します。
絣柄を合わせ要所要所絣がずれないよう仮に括って、さらに固定するための糊付け引っ張りをします。
染色回数が多く、染色時には糸が乱れ、糸切れが生じやすいため、地糸は、綛の状態で染色します。したがって染色により起きた糸の毛羽をおさえ、綛状の糸がほぐれやすく糸繰りをらくにするためにも糊付けを必要とします。糊付けの状態が悪いと糸はなれが悪く、毛羽立ちが起き、この影響は製織の工程にまで及びますので細心の気配りで糊付けします。
染色された綛糸を竹枠または木枠に巻き取る作業で、この繰り返しをスムーズにするためにも地糸には糊付けがされます。この時点で切れた糸をつなぎ、一綛づつ丁寧に糸を繰り次の工程にそなえます。
整経は、竹枠または木枠に巻かれた糸を一定の長さ、本数などに備えることです。
経地糸は綛で染色された後、糊付け糸繰りの工程を経て、地糸のみの整経を行います。久米島の織物はこの工程により後の作業がスムーズに出来るという伝統がいまだに守られています。
経巻は、地糸のみの巻き取りを行ういわゆる絣掛け式の方法が用いられています。図案に順次て地糸の部分を筬1目毎に糸を2本づつ仮筬通しを行います。
次に経巻取り台で糸を櫛で解かし、アザと筬を移動させながら張力を一定に保ち巻き取っていきます。
糸が固くしっかりと巻き取れるようにハタグサと厚紙を適当に挟み込みながら巻き取って行きます。
経巻が地糸のみなので、筬に通された地糸と地糸の間に絣糸をアゼを移動しながら配列します。この時点で仮筬を外します。
配列の済んだ経糸は、織機の上に置き、2枚の綜紘に1本、1本アゼの順に丁寧に通していきます。
布の経糸密度を一定に保つため本筬通しを行う。アキ羽がでないよう気をつけながら1目に2本ずつ通す。通し終えたら再度アキ羽や込み差しがないか確認する。
綜紘を通し、本筬通しを終えた経糸は、織機に取り付け、綜紘、筬の位置を千巻と、間先の高さに調節します。次に絣の乱れを正し、図案通りに所定の位置に来るように絣を整えます。絣掛け式の方も同様に合わせます
絣解きを終えた緯絣は、20本単位に大分けします。さらに1本ずつ小分器を用いて小分けします。1本ずつ小分けされた緯絣、地糸とも糸車で小管に巻き、さらに織杼にセットして製織に用います。
小分器が導入されたのは昭和40年前後です。それ以前は屋敷の周りに竿を立て、絣を長く張り、1本ずつ歩きながら手枠(竹枠)で長時間かけて巻く方法でした。このように小分け機が導入されるまでは、根気と体力のいる作業法で行われていました。
絣掛け式の織付けは、やや複雑で地糸を織り付け棒に括り固定します。絣糸を図案の通りそれぞれの位置に来るように絣掛け棒に括り付け全体を千巻棒に固定します。一方、間先においても千巻き側同様に絣掛け棒に絣を合わせます。この時点で地糸と絣糸の張力のバランスを取るよう細心の注意を払いながら調整し、絣掛けに巻付けて固定します。
したがって久米島では、一区間織るごとに機からおりて先に固定した間先の絣糸を解き、前記の作業を繰り返し緯糸を織り込み製織します。この方法は非能率的ですが、経絣を丁寧に合わせることが出来るのであえてこの方法が好まれています。製織は高機を用いて、手投げ杼により行います。