久米島紬の作業工程  意匠設計

①図案作成

久米島紬の製造は、先ず意匠計画を行い、図案の作成に入ります。次に、経糸及び緯糸の素材を選び、さらに筬密度、緯糸密度、玉数、配色、反数等を合わせて準備します。

 

図案の作成には、御絵図帳、絣図案集及びこれまで製作した反物等を参考にし、縞、格子、縞と絣、総絣のなかからどの文様構成にするかを決めます。絣の単位を決め、絣配置位置を割り出し、絣を組み合わせて完成します。

 

図案は、グラフ用紙に一完全以上描き、羽数を計算記入します。図案と配色の計画には作品の評価に影響する重要な要素なので、慎重に検討します。


②絣づくり

●経-印棒作成

図案の作成が終わると絣括りの準備に入ります。なかでも経絣のための印棒の作成は寸分くるわず正確に印付けを行う必要があります。一般に印棒の作成は図案にもとづき一完全以上を目安に印付けを行っています。

●緯-種糸作成

久米島紬の緯絣の技法は、明治の頃までクガナガシによる手結式(クガナグヮーイーチリ)であったが、明治以降は絵図式が導入され近年はほとんど絵図式を用いています。

 

布幅40cmを想定して描かれた図案紙と絵図台の中心を合わせて動かないよう固定します。この上から木綿の白糸(墨が散らないよう糊付された糸)を張力を一定に保ち絵図台の筬目に掛けます。

次に緯糸打ち込み本数を考慮しながら図案に沿って筆で緯絣の部分を1本1本丁寧に墨付けを行います。これが絣を括る目印になります。


●経-綛糸糊付け

●緯-綛糸糊付け

綛糸は、糸繰り前に糊付けをすることによって、糸の毛羽をおさえ糸繰りがたやすくなります。

 

芋澱粉は染色後の糸、特に泥染糸に光沢をもたらし、毛羽をおさえる効果が強力であるとされ、泥染めに最適です。糊の濃度は糸繰り前と染色後の糊の濃度を調節し使い分けます。糸に糊を完全に浸透させ、一綛ずつはたき、竿で干します。

 

さらに乾燥した糸を水で湿らせ、布巾でくるみ糸全体になじませ、再度丁寧にはたくことによって糸繰りがらくにできるという久米島特有の方法で行っています。


●経-糸繰り

●緯-糸繰り

経糸、緯糸の必要量の綛糸を見積もり、綛糸をかけるチーシーメーと呼ばれているフワリに一綛ずつ掛けて糸を竹枠か木枠に繰り取ります。竹枠の場合手首で竹枠を回転させながら繰ります。

●経-整経

●緯-整経

意匠設計で作成した図案を基に経糸と緯経の必要な本数と長さを得るために整経を行います。この工程での整経は絣糸のみで、経糸の地糸は染色後に行います。

 

久米島紬の機仕掛け単位は1匹(2反)~2匹(4反)で、整経長さは織物反数長さに織縮と織り付け長さを加えた長さで整経します。整経は、木枠かボビンに巻いた枠立てに立て、手廻しの整形機を用いて行います。

 

経絣の整経は絣括り長さと色別に分かりやすいよう括りで順番を印す突議の作業が効率よくできます。緯絣は、種糸の長さに沿って整経を行うが、後の小分けの事を考慮し、20本単位に小アゼでまとめさらに全体を大アゼでまとめます。

●経-印付け

●経-絣括り

経絣を括るときの目安には、あらかじめ細長い板棒に絣の一を印絣尺を(2-経-1)作成します。整経された絣糸は、廊下や木陰等、糸が長く張れる場所に張り、絣尺を用いて絣の部分を印します。絣の印付けが全部終了した後その部分をビニール(以前は蒸した芭蕉葉)で何重もくるみ、さらに締まりの良い湿った木綿糸で括ります。

 

本来絣の印付けのことをシミチキーと呼んでいて墨が用いられていたことがよくわかります。

●緯-絣括り

緯絣は、長く張った糸に沿って種糸の張力を一定の重量で保ち墨印の部分を括ります。久米島紬の染色は、植物染料で染色回数が100回前後染め重ねられています。

 

そのため、括りが弱いと絣が汚染され、鮮明さがなくなり、強いと絣と地の際がはっきり区切れ、久米島紬の特徴でもある絣足のやわらかい良さが表現できなくなります。また絣尺の印や種糸の印位置を正確に括らないと絣柄が合わなくなり、絣文様の出来上がりに影響します。絣括りは、括りの締め具合や正確さが要求される大切な作業です。